配分額 *注記 |
4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
1998年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1997年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1996年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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研究概要 |
5人の研究分担者は前8世紀から後1世紀に至るギリシア・ラテン文学の各時代の代表者について,それそれ危機の時代との関わりを考察した。すなわち,中務はへシオドスの五時代説話が言われる如く堕落史観を表したものなのか,複雑な解釈史を振り返りつつ考えた。内山は,日蝕や彗星等の稀有な天空現象を人間世界の異常な事件に結びつけようとせず、その正体を解明しようとして様々な仮説を提示したギリシア人の特異な精神から出発して,知的認識という世界に対する全く新しい態度がいかに時代の危機を切り開き哲学と科学を成立させたかを考察した。久保田は,アテナイ帝国主義の自殺的暴挙といわれたシシリー遠征(前415)の翌年に上演されたアリストパネスの喜劇『鳥』を手がかりに、これは政治的メッセージなのかファンタジーによる現実逃避なのか,極端に対立する解釈を検討しながら,危機の時代の文学者のあり方を論じた。 未曾有の内乱を終息に導き元首政を開始したアウグストゥスの時代に,ラテン文学はかつてない歴史意識の高まりを見せる。高橋は,歴史不在といわれたローマにおいて,ギリシアのヘロドトスやトゥキュディデスに倣いつつ,あるいは対抗しつつ,弁論家キケロがいかなる歴史理論を打ち出したか,作家がいかなる歴史書を書き始めたかを考察した。南川は,タキトゥスの『アグリコラ』を通じて歴史家の警世について考えた。『ゲルマニア』においては,ローマ人がかつて保有していて今は失ってしまった自由と剛毅の精神を保持するゲルマニアの脅威を警告したが,『アグリコラ』においてはブリタンニアを記述することにより,タキトゥスはローマ帝国の運命にいかに関わろうとしたかを考察した。
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