研究概要 |
本研究課題では,離散時間制御器によって連続時間特性を最適に設計する,サンプル値制御の研究とそれをディジタル信号処理に応用する研究をその中心的な課題とした.通常のディジタルフィルタ設計では離散時間領域のみで設計が行われ,連続時間特性は間接的に取り扱われるにすぎないが,サンプル値設計を取り入れることにより連続時間特性を最適にするフィルタ設計が可能となる.またこのような連続時間設計をより効率的にするため,近似設計法の確立,その収束証明,サンプル値設計の周波数領域での評価などの課題の解決が必要である. 得られた成果は概略次の通りである. 1. アナログ最適特性を持つフィルタ設計が有限次元離散時間問題に等価変換されることを明らかにした. 2. アナログ最適特性を持つマルチレートフィルタバンク設計問題の解が同じく等価離散時間系への変換により得られることを示した. 3. アナログ特性を最適化するDAコンバータのLMI設計法 4. 高速サンプリング近似により,周波数応答がサンプル値系のそれに収束すること,またそれを元にした設計法を与えた. 5. 周期的時変補償器を導入することにより,サンプル値繰り返し制御の設計を標準H^∞問題に帰着させ得ることを示した. まず1の成果では,そのままではむだ時間を含む信号復元問題を有限次元問題に帰着し得ることを示した.またさらにこれをマルチレートフィルタバンクに適用可能なように拡張した.離散時間設計のみが可能であったフィルタバンク設計において,連続時間特性を最適化する設計が可能になったことの意義は大きい.シミュレーションではあるが,さまざまなフィルタ設計例において,その優位性を確認した. またこれらの成果をDAコンバータ設計や周期時変型補償器を持つ繰り返し制御に適用し,有効性を確認した.
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