研究概要 |
前年度までの成果をうけて ・ マルチレートフィルタバンクの連続時間設計 ・ H^∞の意味で最適なサンプルレート変換器の設計 ・ サンプル値繰り返し制御 を重点的に研究した.得られた成果は概略次の通りである. 1. マルチレートフィルタバンクのサンプル値設計法を確立した. 2. 周期的補償器を許すことにより,最適サンプルレート変換器の性能が離散時間設計に比べて向上することが確認された. 3. 周期的時変補償器を導入することにより,サンプル値繰り返し制御の設計を標準H^∞問題に帰着させ得ることを示した. まず1の成果では,これまで単一サンプルレートの場合にのみ可能であったサンプル値設計を,マルチレートフィルタバンクに適用可能なように拡張した.離散時間設計のみが可能であったフィルタバンク設計において,連続時間特性を最適化する設計が可能になったことの意義は大きい.シミュレーションではあるが,さまざまなフィルタ設計例において,その優位性を確認した. また最適サンプルレート変換器の設計問題をやはり連続時間特性を主体に定式化し直し,これに周期時変型補償器を許すことにより,性能の改善が可能であることを示した.一般にマルチレート信号処理において,このような周期型補償器は必ずしも実装を複雑にせず,しかも性能の改善を可能にする点で有望な方法であると言えよう. 同様の周期時変補償器をサンプル値繰り返し制御の研究に適用することにより,繰り返し制御においても時変補償器が有効であることが確認された.またリフティングによりこの問題を時不変標準H^∞問題に変換することが可能なので,混合感度問題なども統一的に取り扱うことが出来,ロバスト設計が容易になった.実際にシミュレーションではロバスト安定性が従来手法に比べて格段に向上することが確認された.
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