研究概要 |
本研究の概要は以下のようにまとめられる。 1)リンゴ,ニホンナシ,セイヨウナシから得られたすべてのASGV分離株には2-4種類の塩基配列変異株が存在することが明らかになった。2)外被タンパク質(CP)(237アミノ酸),ORF2タンパク質(320アミノ酸)およびORF1タンパク質の一部である可変(variable,V)領域タンパク質(284アミノ酸)の3領域のアミノ酸配列の各分離株および塩基配列変異株間の相同性はCPで92.4%-100%,ORF2で92.8%-100%であった.これに対してV領域の相同性は53.2%-99.3%で,すべての株に保存されているアミノ酸はわずか20.4%であった.3)上記の3領域のアミノ酸配列から系統樹を作成し,各分離株および塩基配列変異株の進化的類縁関係を調べた.V領域による系統樹では,各種果樹類から分離したカピロウイルスは4つの明瞭なクラスター(I,II,III,IV)に分かれた.系統樹の各クラスターと宿主植物の種類との間に関連性は認められなかった。4)IC-RT-PCRによってASGV感染果樹の微量な(0.1g以下)葉組織からASGVゲノムを増幅可能であった.5)ASGVの分離株および塩基配列変異株のDNAクローンを供試してSSCP分析したところ,大部分の株を移動度の異なる一体のバンドとして検出することができた.6)リンゴ,ニホンナシおよびセイヨウナシ2樹の計4樹の葉をSSCP分析したところ,すべての供試樹から2-4種類の塩基配列変異株が検出され,葉によってその構成および量比に違いが認められた.7)ASGV分離株(AAKおよびJP3)をC.quinoaで15代継代を繰り返した後,SSCP分析したところ,継代の繰り返しによって,含まれる塩基配列変異株の構成および量比に変化が生じ,一部の塩基配列変異株が優占することが明らかになった.
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