研究概要 |
自己免疫性甲状腺疾患の甲状腺浸潤リンパ球にアポトーシスが生じているかどうかを、甲状腺および末梢血から分離したリンパ球(またはリンパ球サブセット)のDNAの断片化を、TUNEL法で調べ、核クロマチンの凝集・断片化をbisbenzimide H 33258によるクロマチン染色で調べ、さらにリンパ球細胞膜の統合性の異常を7-amino-actinomycin Dを用いてフローサイトメトリーで調べ、甲状腺内でリンパ球のアポトーシスが生じていることを確認した。しかし、どのサブセットで強く起こっているかは細胞の収量が少なく明らかにはできなかった。またCytocentrifuged Cell Smearを用いて、甲状腺および末梢血から分離したリンパ球のFas抗原の発現を酵素抗体法で調べ、甲状腺浸潤リンパ球でFas抗原の発現が増強しているを明らかにした。一方、Th1とTh2のバランスおよびTc1とTc2のバランスについては、バセドウ病と橋本病患者の甲状腺および末梢血から分離したリンパ球の細胞質内サイトカイン(IFNγ,IL-2;IL-4,IL-5;IL-10)をプロ-サイトメトリーでCD4細胞およびCD8細胞に分けて調べた。しかし、検索した症例数が少ないこともあるが、現時点では個々の症例で大きく異なり、有意の結果が得られなかった。さらに、MHCクラスII抗原陽性甲状腺上皮細胞の影響については、甲状腺浸潤リンパ球の収量がもともと少なく、またリンパ球を、自己のMHCクラスII抗原陽性および陰性の甲状腺上皮細胞と混合培養して反応させた後の回収率が悪く、十分調べることができなかった。従って、今後新たな研究方法を考える必要が明らかになった。
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