研究概要 |
この2年間の研究では,難治性の腎性浮腫の原因を探るため,抗利尿ホルモン(ADH)のVla,V2という2種類の受容体に着目した。我々は、すでにV2受容体の腎内局在を発表しており,今回,まずVla受容体の腎内局在を調べた。その結果,Vla受容体は糸球体と集合尿細管にあり,集合尿細管では管腔側膜にあることを明らかにした。これは,V2受容体が集合尿細管の血管側膜に存在することと対をなし,Vla受容体の働きがADHのV2作用の抑制であるとする我々の考えを強く支持するものであった。 次に,髄質内集合尿細管(IMCD)におけるV2受容体mRNA(V2R mRNA)発現に対するADHならびに高浸透圧の影響を検討した。脱水ではV2R mRNAのdownregulationが知られている。ところが,ADHや脱水の際にみられる高浸透圧はin vitroではV2R mRNA発現を刺激し,脱水の際の変化とは逆であった。では,なにが脱水の際のV2R mRNA発現を調節しているのか。我々は,プロスタグランデインE2(PGE2)に着目した。PGE2はADH依存性cAMP産生を抑制することが知られている。PGE2はADHや高浸透圧で刺激されたV2R mRNA発現をin vitroで抑制することが確かめられた。 現在,このPGE2の作用の面から,引き続き腎性浮腫の機序の解明と治療法の研究を継続しつつある。
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