研究概要 |
本研究では二つの主要目標を掲げた。すなわち、カブラハバチの(1)可視マーカー突然変異の誘発、(2)RAPD分子マーカーを用いた遺伝子連関地図の作成、である。(1)については、幼虫眼および成虫眼の眼色をほぼ完全に失わせる突然変異(cream eye color,cec)、および、短翅突然変異(short wing,sw)のきわめて有用な2マーカー突然変異を得ることができた。特にcecは胚期にその発現が確認できるという利点、さらに細胞自律的な突然変異であることからキメラを検出できるという利点を持っている。今回、精子を用いた卵細胞質内注射(ICSI,intra-cytoplasmic sperm injection)では受精しか起こらないこと、一方精子変態以前の精細胞を用いた場合には受精は起こらず、キメラを生じることを明らかにした(J.Reprod.Dev.,43(Suppl.),159-160(1997))。膜翅目昆虫では一般に雌親が受精卵、未受精卵を産み分ける(すなわち雌雄を産み分ける)ことができると考えられ生態学的見地から研究が進められてきた。これまでの研究は全て二次性比に依存したものであり、発生過程における死亡率を考慮すると不正確さは免れない。cecを用いることによりほぼ完全に一次性比を反映できた(胚期の死亡率はきわめて低い)。今回、従来の知見とは反対に、受精卵の産卵には比較的短時間、未受精卵の産卵には比較的長時間を要するという結果を得て、産卵行動を進化の視点から論じた(J.Insect Behav.,(1998)in press)。(2)については、遺伝子連関地図の作成は完成にはいたらなかったが、RAPDマーカー変異の検出、部分地図の作成など、ほぼ完全にめどをつけることができた。
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