研究概要 |
本研究では,岩盤すべりを起こしやすい泥質片岩におけるそのすべりの最初期の発生理由をつきとめることであった.そして,泥質片岩に存在する黄鉄鉱とグラファイトの薄層が存在することにあることを観察により突き止めた.グラファイトの濃集部は岩石の強度が低い領域と考えられ,またグラファイト自体も摩擦係数が小さいために,比較的小さな地形的差応力で破壊されると考えられた.特にグラファイトの摩擦係数は小さいことは材料科学分野の成果から知られてはいたが,それが岩盤すべりが発生するような高圧下でも同様に摩擦が小さく,地すべり発生場にかかるような差応力によっても破壊を誘発するかは不明であった.そこで申請者は,人工岩石中にグラファイト層を生成して,高圧下で直接せん断試験を行ったところ,岩盤すべりをおこすような深部圧力環境においても,摩擦を大きく逓減させることを発見し,グラファイトの存在が泥質片岩に典型的な岩盤すべりを発生させる素因となることと矛盾しないことを確認した.
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