研究概要 |
山体の重力変形が頻発する泥質岩の分布地域おいて形成された不連続なノンテクトニック断層は,連続的な地すべり層に発達し,斜面災害をもたらす可能性がある.しかしながら,その実体が構造地質学的に十分記載された例はほとんどなく,テクトニックな成因の断層との構造的相違も明確でないままであり,しばしば混乱を招いていた.そして,それらの断層が特に,重力変形が多発する泥質片岩の斜面内部のどの位置で発生するかも不明であった.筆者は山体変形の発生したことが明確になっている斜面から採取された,高品質コアのミクロからマクロのスケールにおよぶ多元構造・組成解析を行なうことにより,特に泥質片岩においては,黄鉄鉱とグラファイトの薄層が脆弱領域であるとの仮説に基づいて検討した結果,同層におけるミクロなすべりの現象が普遍的に存在することを発見した.また,それらの濃集体が連続的または不連続的に泥質片岩の岩盤内に存在して,岩石の強度を規制していることを明らかにした.そして,それから考えられる泥質片岩の最初期の変形現象を具体的に考察し,変形発生モデルを提案した.
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