研究概要 |
現在有機合成化学の分野において、アルカリ土類金属を活用する環境負荷の低減化を指向した有機合成反応の開発を行っている。これまでにアルカリ土類金属の強いBronsted塩基性に着目して、様々な塩基触媒の開発を行ってきたが、この研究の中で、アルカリ土類金属が有するLewis酸性が反応制御において重要な役割を担っていることがわかった。そこで、このLewis酸性に着目して新規アルカリ土類金属触媒の開発を行うこととした、これまでに、Bronsted塩基性を有するカルシウムアルコキシドとキラル配位子であるPyboxからなる錯体が不斉触媒として有効に機能することを見いだしているが、ここで、Lewis酸性を有すると考えられるカルシウムトリフラートを触媒として用いることができないかと考えた。検討を行ったところ、マロン酸エステルのニトロオレフィンへの1,4-付加反応において、第三級アミン存在下カルシウムトリフラート-Pybox触媒を用いると、高収率、高エナンチオ選択性的に目的の1,4-付加体が得られてくることがわかった。この結果は、アルカリ土類金属を不斉Lewis酸触媒として用いた初めての例である。これは、アルカリ土類金属のさらなる可能性を示すものであり今後の発展が期待される。 さらにアルカリ土類金属アミドとBINOL誘導体により調製される触媒をカルコンのインドールへの1,4-付加反応に適用したところ、高収率、高エナンチオ選択的に目的の反応が進行することを見いだした。また、幅広い基質に適用可能で有り、様々なキラルインドール誘導体の構築が可能であった。
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