研究概要 |
有機合成化学の分野においてアルカリ土類金属を活用し、環境負荷の低減が行える有機合成反応の開発を目指して検討を行った。まず始めに、Box-Ca触媒を用いた[3+2]付加環化反応の反応機構について検討を行った。本反応の反応機構としては、段階的反応と協奏的反応の2つが考えられる。そこで、不斉配位子の構造や窒素上の保護基などの検討を行ったところ、[3+2]付加環化体と1,4-付加体の両方が得られる条件が見いだされたことから、本反応は段階的機構で進行している可能性が高いことが明らかになった。さらにこの知見に基づき、窒素上の保護基をより嵩高くすることにより分子内環化反応を抑制することができ、1,4-付加体のみを高収率、高ジアステレオ選択的、高エナンチオ選択的に得ることができた。また、本手法を用い、3位に置換基を有するクルクミン酸誘導体が効率的に合成できることを明らかにした。続いてアルカリ土類金属を用いた新規触媒の開発を行った。アルカリ土類金属は、Lewis酸が存在するため配位子と金属が配位結合できるはずである。そこで、種々配位型触媒の検討を行ったところ、カルシウムに対してピリジンビスオキサゾリン(Pybox)を不斉配位子として用いることにより、不斉触媒として有効に機能することを見いだした。
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