研究概要 |
本年度は次の4つの成果を得た. (1)生物ネットワークの可視化では,見た目の美しさだけでなく,生物学的な理解が目的であることから,各生体内分子の細胞内局在情報を考慮することが重要であるが,力学的ばねモデルでは,トーラス構造状の細胞内局在情報を扱うことが難しい問題があった.そこで,グリッドレイアウトに力学的ばねモデルの損失関数を導入することでトーラス構造等の複雑な細胞内局在情報を容易に扱うことが可能なレイアウト手法を開発した. (2)ベイジアンネットワークによる遺伝子ネットワーク推定では,計算効率化のため,遺伝子群を選び出し,推定される.条件付き独立性の検定によりベイジアンネットワークの構造推定を行う際,遺伝子群から欠落した遺伝子からの制御により,検定結果に矛盾が生じる問題があった。そこで,検定結果に矛盾が生じた場所から欠落遺伝子の存在を同定する手法を提案した. (3)同じパスウェイや機能に属するタンパク質をコードする遺伝子同士は制御関係が密であり,逆の場合,疎であることが想定される.そこで,密に制御関係で連結された遺伝子群をモジュールと定義し,HofmanとWigginsの統計的モデリングによるグラフからのモジュール推定法とベクトル自己回帰モデルを変分ベイズ法の枠組みから階層型モデリングを行うことで,時系列遺伝子発現データから遺伝子モジュールと高精度な遺伝子ネットワークを同時に推定する手法を提案した. (4)時系列遺伝子発現データからの遺伝子群間のGranger因果律を正準相関分析により同定する場合,Grander因果律の検出においてブートストラップ法によりp値が計算されていたため計算コストがかかり,また高精度にp値を求めることが困難であった.そこで,Bartlett補正により尤度比検定の結果を補正することで少サンプルデータの場合でも正確なp値を高速に計算する手法を提案した.
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