研究概要 |
本年度は次の3つの成果を得た. (1)生体内パスウェイに対するグリッドレイアウトアルゴリズムのためのsweep calculationと名付けた新規探索手法を提案し大幅な計算コストの削減を本年度に達成した(Bioinformatics,2000).このアルゴリズムによりノード数n,エッジ数mからなるパスウェイの場合,平均約(m/n)^2倍のオーダーで時間計算量が改善し,従来は20分かかっていた200ノード800エッジ程度からなるパスウェイを数秒でレイアウトすることが可能となった. (2)数千ノードを有する大規模遺伝子ネットワークのレイアウトを,betweenness centralityに基づきモジュール構造へ分解されるように損失関数を定義し,その最適化について焼きなまし法を用いたnode and edge betweenness based fast layout algorithm(BFL)を提案した(BMC Bioinformatics,2009).BFLは大規模生体内パスウェイを対象にした既存の手法よりも高速,かつ,生物的な理解度を損なうことなくレイアウトを可能とするものであった. (3)上記(2)で開発したレイアウトアルゴリズムからの情報抽出により生命システムの理解・知識発見を行うためには,対象となる遺伝子ネットワークが,高精度に推定されたものである必要がある。時系列遺伝子発現データからGranger因果律を概念とするL1正則化ノンパラメトリックベクトル自己回帰モデルによる遺伝子制御ネットワーク推定手法を提案した.(Genome Infomatics,2008).この方法により,パラメータ数がデータサンプル数を超過した場合でも有効なパラメータ推定が可能となり大規模かつ高精度な遺伝子ネットワークを推定することができる.
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