本研究は、文体論(表現分析)および思想史学(言説分析)という二つの方法論に準拠しつつ、小説家あるいは知識人として戦後日本の文化史に大きな足跡を残した三島由紀夫の諸テクストの総合的・領域横断的な分析を進め、この作家の全体像の刷新を目指すものである。平成22年度には博士論文「イロニーとしての文体-三島由紀夫論」を東京大学人文社会系研究科に提出、学位が授与された。 同年度に着手・公開した論文は、(1)「放火という無駄事-『金閣寺』の終わりかた」(「解釈と鑑賞」第75巻9号)、「1960年代における新右翼の形成と美的テロル-三島由紀夫と橋川文三」(「解釈と鑑賞」第76巻4号)、(2)「三島由紀夫『潮騒』論-可視性の領界」(「東京大学国文学論集」6号)の3点である。
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