研究課題
特別研究員奨励費
平成22年度は2次元三角格子を持つBotallackite構造を持つM_2(OH)_3Xの磁性解明を行った。S=1、 Heisenbergスピンを持つNi_2(OH)_3X(X=Br,I)は基本的に反強磁性転移する。Ni_2(OH)_3IはNi_2(OH)_3Brと比べてより結晶格子が歪むようになるが、Ni_2(OH)_3Brの三角格子面内で実現していた強磁性主体のスピン相関が、反強磁性の相関と競合するためにフラストレーション性が高まっているを示した。S=3/2、Isingスピンを持つCo_2(OH)_3Xは四面体構造のCo_2(OH)_3Xと同じく複雑な性質を示した。Co_2(OH)_3Brは逐次相転移し、T_<N2>以下で弱強磁性を伴う。スピン容易軸は三角格子面内であり、2つの磁気相ではサイトごとの秩序を示した。Co_2(OH)_3IはT_N=10Kで反強磁性転移する。磁気構造は特定できず解明することができなかったが、incommensurateな磁気構造を取ることが予想される。Co_2(OH)_3Xにおける複雑な磁性は、幾何学的フラストレーション性を有する2次元三角格子上に、単純な方向ではない異方性をもったスピンが存在していることが原因であると思われる。過去に研究されたS=1/2量子スピンによるCu_2(OH)_3Xの磁気考察とともに2次元三角格子Botallackiteの結果を論文投稿予定である。前年度までに四面体構造を持つNi_2(OH)_3Clは、中性子散乱・μSR測定において異なる磁性を示しているが、非磁性置換及びハロゲン置換を行うことで磁性の振舞いを調べた。非磁性置換については選択的置換がなされ、2種類ある磁気反射のうち低温で現れる磁気反射が消失した。一方ハロゲン置換においては、低温で現れる磁気反射が残り、元物質に比べて静的な振舞いを示すようになった。また転移温度は一番置換されたもので2倍程度に上昇した。S=1/2スピンによる四面体構造でその新奇な磁性により注目度が高いClinoatacamiteCu_2(OH)_3Clの単結晶試料による磁気測定を行い、この結果を国際会議で発表した。また前年度までに実験・解析が行われた四面体構造を持つCo_2(OH)_3Brの磁性の結果報告がPhysical Review Bに掲載された。
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