【研究目的】本研究は、フランスの会計監査役制度の総合的研究を行うものであるが、従来から研究を行っている会計監査役の民事責任に関連して、フランスの会計監査役会社(日本の監査法人に相当する)における社員の責任について焦点をしぼり、研究を行った。 【研究方法】フランスの会計監査役会社の社員の責任に関する研究を行う前提として、フランスの会計監査役会社制度自体の調査を行った。日本の監査法人は特別の法人形態であるのに対し、フランスの会計監査役会社は、さまざまな会社類型について特則を置く方法をとっているので、付随して様々な会社類型(株式会社、有限会社、略式株式会社、専門職民事会社、自由職遂行会社等)の基本的枠組みについて検討を行った。そのうえで、各会社の普通法においては社員の責任はどのようなものとされているか、会計監査役会社となった場合には、そのルールがどのように変容するかについて判例・学説も含めて比較検討した。 【研究成果】以上のように、フランスの会計監査役会社の種類は多岐にわたるので、投稿論文の字数の関係上、(1)フランスの会計監査役会社制度一般に関する研究と、(2)フランスの会計監査役会社における社員の責任に関する研究とを二つに分けて、公表することとした。(1)については、平成19年公認会計士法により導入された特定社員制度(公認会計士でない社員を認める制度)と関連で研究を進めた結果、フランスの会計監査役会社においては1980年代から会計監査役でない者を社員とすることが認められており、会計監査役である社員の独立性を保護するため、持分の譲渡制限、会計監査役でない者の経営陣における割合の上限設定、職業団体の関与などのルールを置いていることが明らかになった。(2)については、フランスにおいて従来から社員の有限責任が認められており、近年では有限責任の緩和がより図られていることが明らかになった(執筆スケジュールの関係上、近日中に公表する予定である)。
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