研究課題
基盤研究(A)
繊維自体のもつ力学特性はそのままにして、生体と接触する表面のみを改質し、肌触り、濡れた肌との摩擦抵抗の軽減、抗菌防臭性などの新しい機能をもつ繊維を開発するための基礎研究を行ってきた。新機能をもたせる方法として、まず、洗濯耐久性や摩擦耐久性に優れているグラフト重合法を検討した。その結果、これまでにグラフト重合が困難であったポリエステルに、脱気操作を行わないで、目的に合った種々の水溶性モノマーを光グラフト重合することに成功した。重合率はモノマー濃度が高いほど、UV照射時間が長いほど高く、グラフト密度とグラフト鎖長はそれぞれ、モノマー濃度とUV照射時間に依存した。これらのグラフト成分の同定はX線光分光法を用いて行い、乾燥時および湿潤時の表面構造を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。その結果、乾燥時では、グラフト鎖長やグラフト密度により、そのグラフト鎖の構造は異なり、グラフト鎖長やグラフト密度が高くなるにつれて、ブラッシュ構造からクラスター構造へと移行することがわかった。また、湿潤時では非常にフレッキシブルで、わずかな力で変形するが、力を取り除くとすぐにもとの状態に回復することが観察された。皮膚との摩擦抵抗性は摩擦感テスターを用いて測定した。新機能の一つである抗菌性は統一試験と定性試験によって評価し、優れた抗菌効果を確認した。安全性の確認はヒト細胞を使った3次元培養皮膚モデルによる皮膚刺激性テストを行った。その結果、皮膚刺激性は陰性となった。なお、表面加工による力学特性の変化は少なく、衣服材料として優れた特性を維持していた。
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