配分額 *注記 |
13,200千円 (直接経費: 13,200千円)
2000年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1999年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1998年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1997年度: 8,300千円 (直接経費: 8,300千円)
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研究概要 |
全研究期間(4年間)で以下のテーマを完成させた. 1.ジアステレオ面選択性予測のための新理論モデル (a)従来の面選択理論の問題点の解明 この20年,ジアステレオ面選択に関してAelkin-AnhモデルとCieplakモデルが遷移状態のantiperi planar効果(超共役)による安定化が面選択の本質であることを前提として熾烈な論争を展開してきた.本研究では,ケトンのLiAlH_4還元の遷移状態の構造を初めて求め,この前提の誤謬を種々の環式ケトンを用いて定量的に示した. (b)新しい面選択予測理論の構築 面選択の本質が反応推進力の面差にあることを仮定し,Salem-Klopmanの反応推進力の式を基礎に新しい面選択理論を構築した(エクステリアフロンティア軌道広がりモデル(Exterior Frontier Orbital Extension Model:EFOE Model)). (c)新理論モデルの応用 多数の環式ケトンにこのEFOEモデルを適用したところほとんど例外なく適用できたのみならず,面選択性の予測にも威力を発揮することが実験で確認された. 2.微弱相互作用系の定量解析 (a)Seをプローブとした微弱相互作用機構の定量解析 微弱相互作用の定量化のための方法論を確立することを目的として,16族元素のSeが関与する一連の微弱相互作用の定量評価と機構解析を行った。 (b)Seが関与する水素結合の定量解析 OH…Se水素結合の定量評価を行った。^<77>Se-NMRや赤外スペクトルの解析の結果,この水素結合の機構が共有結合的であることが示唆された。 (c)タンパク質における分子内微弱相互作用型式の抽出と機構解析 タンパク質のフォールディング機構解明のための基礎データの収集を目的として,PDB(Protein Data Bank)のタンパク質X線データをもとに,硫黄原子回りの原子間接触の種々の型式を抽出し,S-S…S,S-S…O,C-S…Sなどのvan der Waals接触およびそれら相互作用の強さの評価と機構解明を行った. 3.基礎有機化学における諸問題の再検討 (a)ハロベンゼンの不活性化の問題 ハロベンゼンの反応性は一般にハロゲンのI効果およびM効果の拮抗作用で説明されているがfluorobenzeneはベンゼンより活性化されている.不活性化の原因は,塩素,臭素,ヨウ素の非共有電子対の電子供与性のために最低π軌道(lowest occupied π-MO)の準位が低下することにある.すなわち,ベンゼン環の反応性を支配する軌道はフロンティア軌道ではない. (b)cis効果とgauche効果の問題 酸素やフッ素原子は強いcis効果とgauche効果を示す.その原因を解明すべく,1,2-difluoroetheneのNBO解析を行ったところ,フッ素原子の非共有電子対の非局在化(LP Effect)とσ型antiperiplanar効果(AP Effect)がcis体の方が大きいことが原因であることがわかった.
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