研究概要 |
磁気冷凍は磁気熱量効果を用いた冷凍法であり,エネルギー効率が高く,環境にやさしいことから注目を集めている.磁気冷凍機実現のためには大きな磁気熱量効果を有する作業物質を開発が急務である.本研究では磁気熱量効果の大きい物質として,一次の磁気相転移を示す化合物をとりあげた.このような化合物ではキュリー温度直上で強磁性が磁場によって誘起されるので,大きな磁気熱量効果が期待される.本研究では,ErCo_2とRMn_2Ge_2(R=Gd,Dy)をとりあげ,磁気熱量効果の研究を行った.また,あわせてこれらの化合物の磁気転移の詳細についても調べた. 結果として,ErCo_2系の化合物がキュリー温度で大きな磁気熱量効果を示すことを見出した.断熱温度変化ΔT_<ad>は8Tの磁場で13Kにおよび,この値は他の希土類化合物よりも十分大きい.さらにCoを少量のNiで置換することにより,大きな磁気熱量効果を保ったままキュリー温度を32Kから13Kまで変化させることにも成功した.一方,DyMn_2Ge_2は大きな磁気異方性を示すため,単結晶を用いた測定によってその磁気熱量効果を明らかにすることができた.この化合物ではΔT_<ad>は5Tで6K程度であるが,その大きさは磁場によってあまり変わらない. また,本研究の結果,一次転移物質の磁気熱量効果の特徴も明らかになった.すなわち,通常の二次転移物質に比べると一次転移物質は,弱い磁場でも比較的大きな磁気熱量効果を示すが,その温度幅は狭い,磁場を大きくしても磁気熱量効果の大きさはあまり変わらないが,温度幅は磁場に比例する,という特徴をもっている.このような特性は最近提唱されているactive magnetic regenerator(AMR)に有利であり,一次転移物質のもつ磁気冷凍作業物質への応用の可能性を示すことができた.
|