研究概要 |
1.少年非行の第三のピーク(昭和58年)から第四のピーク(平成10年)にかけて、刑法犯少年の万引き事犯の増減が非行統計の増減に影響を与えていることが明らかになり、万引き事犯は昭和63年(88年)に激増期、平成3年(91年)に激減期、平成9年(97年)に再増加期を示している。 2.このような万引き事犯の増減は、調査対象とした全国6都市の約20店舗の事例からみると、 (1),大型店舗が少年を顧客の対象に設定し、少年たちが店舗を消費や遊びの場とする程度によって、 (2),各店舗が保安業務を警備会社に委託し、万引き事犯を画一的に警察へ通報する程度によって、 (3),不況による保安業務や従業員の合理化によって、万引きが暗数として潜在化する程度によって、 (4),警察通報の後に、管轄警察署が当該事犯を微罪処分とするか簡易送致等と処理するかによって、非行統計全体に対して多様な影響を与えてきたことが明らかになった。 3.上記「激増期」には(1)の増加と(2)の強化が大きく作用し、「激減期」には(1)の低下と(3)の進行が大きく作用し、「再増加期」には少年を顧客対象とする店舗(専門店や量販店等)の(2)の強化が大きく作用しているとみることができる。また、店舗での万引き事犯の処遇が、寛容型から厳罰型へ移りつつあることも確認できた。 4,成人の万引き事犯に変化が表れてきた。ホームレスや失業者による「生活型」の万引きが急増し、外国人による万引きも増加している。 5.警察の処遇基準(微罪か簡易送致等か)は解明できなかったが、各店舗の処遇類型は、警備実務型・道徳的事業型・少年教育型・経営機能型に分けることができる。
|