研究概要 |
最初に、各経済主体(消費者)について、その才能や身体的特徴(たとえば、身体障害の程度)といった資質(talent)を明示した経済モデルを構築した。その特徴は,たとえば車椅子によって障害者の生活が改善されるように,個人の資質が財(これを資質改善財とよぶ)の消費によって変化する変数と考えた点にある。 この経済モデルについて、ときにシミュレーション分析による結果を参照しながら,以下のような結果を得ることができた。 (1) 車椅子などの資質改善財が市場を通じて供給される場合の経済的特性の分析した。また,資質改善の程度に上限がある場合の均衡を新た定義し,その特性の分析も行った。 (2) 同じく資質改善財を生産する技術に技術進歩があった場合の経済効果と,資質改善財そのものの技術進歩,すなわち車椅子の機能向上がもつ経済効果を分析,その類似性を明確化することができた。 (3) 資質改善財の生産企業に対する補助金政策と,受益者に対する所得補償について,その経済効果を比較分析した。とくに障害者にかかわる諸特性を念頭をおいたばあい,障害者に対する所得保障が障害者用医療機器の価格上昇を招いている可能性があることが示された。 (4) 必要に応じた分配理念のモデル化とその分析。とくに分配理念に合致する配分を見いだし,たとえば市場メカニズムで達成することの困難さが明かとなった。 以上の成果は,論文として発表すべく,現在執筆中の段階にある。
|