研究概要 |
最初に個人の身体的特徴(障害の程度に相当)を改善するための財(あるいは技術)が公共財的特性をもつ場合(たとえば盲人用歩道など)について,その厚生経済学的分析を行った。その結果,つぎのような特徴的成果が得られた。 (1) 従来の効率性達成を主目的とする均衡概念(リンダール均衡,あるいは新たな均衡)では,障害の程度の重い消費者ほど,状態改善のためにより大きな負担をせざるを得ない(シミューション分析の結果から)。 (2) 公平性の視点(たとえば非羨望概念)を導入した場合には,逆に,障害の程度が軽い消費者ほど,より大きな費用負担を求められる。 こうした帰結をもたらす要因は,財の配分にあたって何を基準に求めるかによる。 以上の,効率的でかつ公平な分配を実現するためには,私的財について一括税型の所得移転を行う必要がある。しかし,一括税は,その最適水準を内生的に決定するという視点から言えば,非現実的性格を持っている。 そこで,研究の第2段階として,傷害の程度に反比例する比例税を導入するによって,障害改善のための財と私的財の配分の組合せを検討した。その結果,導入される公平性概念の要求度に応じて,最適税率の大きさが変化することが示された。より具体的には,公平性上の要求が強ければ強いほど,限界税率は高くなり,逆に公平性の要求が弱ければ,限界税率が低くなることが,部分的ながら,示された。 以上の成果は論文として公表すべく,現在執筆中である。
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