研究概要 |
芳香族ジカルボン酸誘導体とアルキルベンゼンとの[3+3]光環化付加反応の適応範囲及びそのメカニズムを検討し,次の知見を得た。 1. 1,2-,1,3-,1,4-,2,3-,1,8-位に酸無水物基,イミド基,ジエステル基,ジシアノ基が置換したナフタレン化合物とトルエン,キシレンなどのアルキルベンゼンとの光反応を検討した結果,1,8-位に酸無水物基,イミド基,ジシアノ基が置換した化合物でかなり一般的に[3+3]光環化付加反応が進行することが明らかになった。 2. ベンゼン,アントラセン,フェナントレンなどナフタレン以外の骨格をもつ芳香族ジカルボン酸誘導体とアルキルベンゼンとの光反応では,[3+3]光環化付加反応は全く認められなかった。 3. 種々のアルキルベンゼンによる1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物および1,8-ナフタルイミドのケイ光消光速度定数は,[3+3]光環化付加反応の起こり易さとよく対応することが明らかになった。 4. 反応系の光電子移動に伴う自由エネルギー変化ΔGの値が,その系で観測される光反応の形式を決定する非常に重要な因子となっていることが明らかになった。特に,[3+3]光環化付加反応が進行するためには,系のΔGの値が負に大きくなる必要があることが明らかになった。 5. 以上の結果などより,[3+3]光環化付加反応は,アルキルベンゼンから1,8-ナフタルイミドの励起一重項状態への電子移動,生じるラジカルイオン間のプロトン移動,生じるラジカルペア間の電子移動,最終的に生成するアニオン-カチオン間の熱的な環化付加反応,という一連の過程を経て進行していると考えられる。また,このメカニズムによって,反応の適応範囲,反応に対する溶媒効果などが非常に合理的に説明できた。
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