研究概要 |
金属Tl,In,Gaおよびホスフイン、アルシンを用いたガスソースMBE法によりInP基板上へTlInGaP、TlInGaAs四元混晶半導体を成長した。結晶成長温度は450℃であり、X線回折測定、EPMA測定によりTlInGaP、TlInGaAsが成長されていることを分かった。TlInGaAsのTl組成は成長中のTl分子線強度に比例して増加することが確認された。 このようにして成長されたTlInGaAsからはホトルミネセンス(PL)発光が観測された。発光波長はTl組成の増加につれて長波長にシフトし、Tlの導入によりバンドギャップが狭くなっていることが分かった。測定温度を変えたPL測定から、バンドギャップエネルギーの温度依存性はGaAs,InP,InAsよりも緩やかになっていることが分かった。特に、Tl組成6%のTlInGaAsにおいては、ほぼ温度無依存のバンドギャップエネルギーが観測された。これは、当初我々が予測した結果に合致するものである。 続けてTlInGaAsをInP層で挟んだダブルヘテロ構造を成長し、X線回折測定、PL測定から、ヘテロ界面での相互拡散による混晶化は生じていないことが確認された。ダブルヘテロ構造とすることによりPL発光強度は強くなった。 TlGaInPに対しても同様に、測定温度を変えた光伝導測定からバンドギャップエネルギーの温度依存性がTlの導入により緩やかになっていることが分かった。また、TlGaP混晶に対してラマン散乱測定を行い、TlPラマンピーク初めて観測した。ピーク位置はInPのラマンピークより低波数側であった。 以上の結果より、温度無依存波長の半導体レーザへの応用の可能性が示された。
|