研究概要 |
魚醤油の成分組成の特徴を明らかにするために,東南アジアおよび東アジア7ヶ国の60種以上の魚醤油について遊離アミノ酸,有機酸,ヌクレオシド・塩基,クレアチンおおびクレアチニンなど100種類近い成分の分析を行った.ベトナム,日本およびタイ産魚醤油はこれら化合物含量が最も高く,アミノ酸組成も類似していた.ミャンマーおよびラオス産魚醤油ではこれらの含量は著しく低く,アミノ酸組成も異なっていた.中国および韓国産魚醤油はこれらの中間的な特徴を示した.クレアチニン含量は魚醤油の濃度の指標となり,製造過程における品質管理にも利用できると考えられた. マイワシおよびスルメイカを用い,10%および20%食塩存在下でそれぞれ半年および1年間熟成を行い,その間のこれら化合物の変動を調べた.遊離アミノ酸総量は20%食塩では5ヶ月後にピークとなり,その後やや減少を示した.10%食塩では3ヶ月後がピークであり,20%食塩と比べて総量はかなり高く,微生物の作用が強いことが示唆された.熟成後のこれら諸成分の含量は市販魚醤油のそれとほぼ同程度に達した. 高品質な典型的魚醤油であり,窒素回収率が97.7%でほぼすべての成分が分析されたベトナム産魚醤油を用い,呈味有効成分を調べた.すなわち,分析値に基づいて合成エキスを調製し,三点識別試験法によりオミッションテストおよびアディションテストを行った.その結果グルタミン酸,スレオニン,アラニン,バリン,ヒスチジン,プロリン,チロシン,シスチン,ミチオニンおよびピログルタミン酸の10成分が有効成分であることが明らかになった.総窒素の20%を占める低分子ペプチド画分では中・塩基性ペプチドは甘味を増強し,酸性ペプチドは酸味を強めることが明らかとなった.
|