研究概要 |
本研究ではウズラ卵黄膜の精子レセプターを同定し,その生合成機構について研究した。鳥類の卵黄膜は,内層と外層の二層からなるが,卵子は内層だけに覆われた状態で排卵される。卵黄膜内層を精子とインキュベーションすると穴があくこと,その際にタンパク分解酵素阻害剤を添加すると精子の接着が認められること,さらにZPCタンパク抗体によって接着が阻害されることからは卵黄膜内層のタンパクのひとつであるZPCが精子レセプターの本体であると同定した。そこでZPCの発現をウエスタンブロッティングおよびノーザンブロッティングで解析し,さらに培養顆粒膜細胞を用いて産生及び分泌の調節機構について調べた。その結果,顆粒膜細胞にのみ1.4kbのZPCmRNAが検出された。卵胞が成熟するにつれてこのシグナルは強くなる傾向にあり,これはウエスタンブロッティング法による卵胞のZPC含有量の結果ともよく一致した。培養顆粒膜細胞を用いて各種ホルモンや細胞成長因子の効果を調べたところ,ZPCの産生はFSHによって最も顕著に促進されることがわかった。これらの結果から,精子レセプターであるZPCタンパクはFSHの刺激によって顆粒膜細胞で産生されていることが明らかとなった。ウズラZPC遺伝子の塩基配列は,哺乳類の透明帯のZP3,両生類の卵黄膜のZPC,さらに魚類のコリオンのL-SFと呼ばれているタンパクとも非常に相同性が高い。これらのタンパクは共通の祖先タンパクから由来しているらしい。ところが本研究では,ウズラのZPCは卵胞の顆粒膜細胞が起源であることが示された。哺乳類と両生類では卵子が産生分泌していることが明らかとなっている。魚類では肝臓が産生分泌している。共通の祖先タンパクから由来しているのになぜ別々の臓器で産生されているのであろうか。今後これらの点を中心に研究をさらに展開する予定である。
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