研究概要 |
1) Protein4.2(P4.2)異常症 遺伝性溶血性貧血200例の赤血球膜蛋白について解析した結果、P4.2異常症は量的異常と質的異常に分けられ、さらに前者は部分欠損型と完全欠損型に分類された。推定される病因遺伝子P4.2とband3(B3)について遺伝子解析を行い以下の成績が得られた。 量的異常;部分欠損型:表現型として大半はhereditary spherocytosis(HS)であることが判明した。その病因遺伝子の一部はP4.2の結合蛋白であるB3であることが遺伝子解析から判明し、以下にその11種の変異を示す。G13OR,codon56,1nt.del.,codon112-113,2nt.del.,codon183,1nt.ins.,G455R,G714R,R760W,R760Q,R808H,T837R,T837M。完全欠損型:その表現型はいずれもP4.2遺伝子異常であり、かつ、ホモ接合体であることが判明した。その変異で最も頻度が高いのはNippon type(A142T)であった。質的異常;異常蛋白発現型:P4.2遺伝子異常のR488H(ヘテロ接合体)であることが判明した(P4.2 doublet Nagano)。 2) P4.2蛋白および遺伝子発現 ヒト赤芽球においてP4.2は他の主要膜蛋白に比べ最も発現が遅く、orthochromatic erythroblast(Ebl)の段階で初めて蛋白として発現することが、Western blot法、flow cytometry法、蛍光抗体法によって判明した。一方、mRNAの発現はearly Eblから検出され、成熟するに従い7種のisoformが発現することがSouthern blot法によって判明した。各isoformはP4.2のexon 1,3,5のsplicingによって生ずることが判明した。 3) B3とP4.2の遺伝子発現調節 Promoter領域のCpG siteにおけるmethylation:正常対照とP4.2欠損症例について検討し、以下の成績が得られた。正常では両遺伝子ともCpG siteはほぼ完全にメチル化されていることが判明した。P4.2欠損症例では特徴的にB3の3個所のCpG siteが非メチル化であることが判明した。この成績はB3の遺伝子発現調節異常がP4.2発現に間接的に影響を与えている可能性を示唆すると考えられた。
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