研究概要 |
1. ヒト胃癌培養細胞と大腸癌培養細胞にアデノウイルスベクターを用い、50MOlのp53遺伝子を導入すると、何れにおいてもP53およびP21蛋白の発現が亢進した。細胞はアポトーシス誘発群(MKN-1,DLD-1,LoVo,COLO320)、細胞周期停止群(MKN-45,MKN-74,KATO-III,COLO201)、無変化群(TMK-1,OCUM-2M,WiDr,SW837)の3群に分類された。アポトーシス誘発群ではbax蛋白の発現亢進、bcl-Xlの発現低下が見いだされた。p53遺伝子変異との関連はなかった。 2. 胃癌、大腸癌培養細胞株では種々の程度にFAS抗原が発現していた。抗FAS抗体誘発アポトーシスは胃癌ではp53遺伝子とは関係なく、他方、大腸癌では野生型p53遺伝子を有するLoVoのみで誘発された、アデノウイルスベクターを用いて野生型p53遺伝子を導入するとFAS抗原の発現が亢進した。 3. 胃癌培養細胞株を44℃、30分間培養するとアポトーシスが、60分間培養するとネクローシスが誘導された。アポトーシス誘発系ではp53蛋白の発現が亢進した。 4. 長径5mm以下の微小胃癌26例、早期胃癌29例、進行癌33例のアポトーシス・インデックス(AI)と増殖活性細胞(KI)を比較すると、AIに差はなかったが、KIは有意差をもって進行胃癌で高かった。アポトーシスは胃癌の初期から生じていることが示された。 5. 大腸癌の術前に5FU座薬を投与すると、大腸癌細胞のアポトーシスが有意に増加し、増殖活性は低下した。他方、腫瘍内微小血管数が有意に減少した。 6. dThdPaseは消化器癌細胞のみならず、間質細胞や平滑筋細胞でも発現している。胃癌(124例)および大腸癌(97例)を検討して所、dThdPase発現症例では深達度に関係なく、腫瘍内微小血管数が有意に増加していた。また、dThdPase発現大腸癌では非発現大腸癌に比較して、有意にアポトーシス細胞が少なかった(P<0.05)。アポトーシスとp53蛋白との関連はなく、p53遺伝子非依存性と見なされた。
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