研究概要 |
1. in vitroの研究成果 (1) ヒト胃癌培養細胞と大腸癌培養細胞にアデノウイルスベクターを用い、50MOIのp53遺伝子を導入すると、何れにおいてもP53およびP21蛋白の発現が亢進した。細胞はアポトーシス誘発群(MKN-1,DLD-1,LoVo,COL0320)、細胞周期停止群(MKN-45,MKN-74,KATO-III,COLO201)、無変化群(TMK-1,OCUM-2M,WiDr,SW837)の3群に分類された。アポトーシス誘発群ではbax蛋白の発現亢進、bcI-XIの発現低下が見いだされた。P53遺伝子変異との関連はなかった。 (2) Thymidine phosphrylase(dThdPase)は胃癌(6株)および大腸癌(6株)培養細胞で種々の程度に発現していたが、dThdPase発現とp53遺伝子変異に関連はなかった。dThdPase高発現株のTMK-1細胞では温熱処理により酵素活性が上昇し、5'-deoxy-5-fluorouridineに対する感受性が亢進して、アポトーシス細胞が増加した。 2. in vivoの研究成果 (1) dThdPaseは消化器癌細胞、のみならず、間質細胞や平滑筋細胞でも発現している。胃癌(124例)および大腸癌(97例)を検討した所、dThdPase発現症例では深達度に関係なく、腫瘍内微小血管数が有意に増加していた。また、dThdPase発現大腸癌では非発現大腸癌に比較して、有意にアポトーシス細胞が少なかった(P<0,05)。アポトーシスとP53蛋白との関連はなく、p53遺伝子非依存性と見なされた。 (2) 口腔扁平上皮癌15例において、術前抗癌剤投与および放射線照射の効果を検討したところ、癌細胞のアポトーシスを有意に増加させ(P<0.05)、細胞増殖活性を抑制した。
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