研究概要 |
腸管杯細胞からの粘液分泌調節機構を研究するために,ムシンの定量法を検討した。ムシンをメンブランにブロットし,レクチンで検出する方法を開発した。N.brasiliensis(Nb)感染C57BL/6マウスの腸管ムシン量は,感染7日をピークに顕著に増加し,その後減少した。このムシン量は,腸管杯細胞数の変化および排虫現象とよく一致した。ヌードマウスにNbを感染させると,ムシンの増加応答は遅れるが,増加量には正常マウスと有意差はなかった。IL-4^<-1->にNbを感染させても,腸管ムシン量に有意差はなかった。Nb感染マウスに,Nb抗原,抗CD4抗体またはシクロホスファミドを投与しても,腸管ムシン量の変化はなかった。現在のところ,Nb感染による腸管ムシン量をin vivoで変化させる系はない。非感染マウスの腸管細胞を分離し,Con Aを加えて培養すると,上清中にムシンの増加が見られた。また,Nb感染ラットの腸管細胞にCon AまたはNb抗原を加えて培養すると,ムシンの増加が見られた。RT-PCRによって,マウス,ラットの腸管からムシンコアタンパク質のmRNAを検出する系は確立できなかった。しかし,ムシンを分泌するヒト大腸癌細胞株LS174Tを用いて,RT-PCRによりムシンコアタンパク質(MUC2)のmRNAを検出できた。LS174T細胞にTNF-αを添加すると,MUC2mRNAの発現が増加した。また,LS174T細胞にIL-13を添加し,培養すると,細胞数には変化は無いが,ムシン分泌が促進された。RT-PCRにより,LS174T細胞にはIL-13レセプターが検出された。LS174T細胞を用いる系は,ムシン産生の調節機構を研究する上で有効な系と考えられる。
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