研究概要 |
N.brasiliensis(Nb)感染でみられる腸管ムシンの急激な増加が抗原刺激による免疫応答かどうかを確認するために,感染マウスに可溶性Nb成虫抗原を腹腔投与した。しかし,抗原投与による腸管ムシン量と杯細胞数の変化は見られなかった。腸管ムシン量の変化とIL-4の関連を検討するために,IL-4 gene knockout(IL-4^<-/->)マウスにNbを感染させた。感染5日目に,IL-4^<-/->マウスでは腸管成虫の回収数は有意に高かったが,腸管ムシン量には差は見られなかった。昨年度,シクロホスファミドと抗CD4抗体の処理によっても腸管ムシン量の変化を認めなかった。Nb感染以外のin vivo系で,腸管ムシン量を顕著に変化させる方法は今のところ見出されない。ムシン産生のin vitro系で,非感染マウスの腸管細胞にNb感染マウスの腸管膜リンパ節細胞と成虫抗原を加えてインキュベートしたが,ムシンの増加は見られなかった。Nb感染ラット腸管細胞では抗原とCon Aの添加によりムシン産生の増加傾向が見られた。しかし,腸管細胞を使う系では再現性に若干の問題が残った。RT-PCRにより,ラット腸管のムシンコアタンパクmRNAを検出する方法は二組のプライマーと種々の条件を変えて検討したが,満足のゆく条件は見つからなかった。ムシンを産生するヒト大腸癌細胞株LS174Tのムシンコアタンパク(MUC2) mRNAをRT-PCRにより半定量的に検出する条件を確立した。LS174T細胞にTNF-αを添加して培養すると,MUC2 mRNAが2-3倍増加した。LS174T細胞にIL-13を添加すると,上清中にムシンの増加が見られた。また,RT-PCRによってLS174T細胞にはIL-13のレセプターが検出できた。Nb感染マウスやラットを使ってムシン産生の調節機構を調べることには,困難な点がある。ムシン産生調節機構をin vitroで検討するには,LS174T細胞を用いる系が有効と思われる。
|