研究概要 |
炎症性腸疾患の病態を検討するために,IL-12p40を腸管でoverexpressionするトランスジェニックマウスを作製し,このマウスを使ってデキストラン硫酸腸炎における免疫担当細胞やサイトカインの変化を解析することにした.mouse IL-12p40 cDNAを大腸,小腸を中心に発現するT3′promoterでdriveするような全長約5kbのDNA constructを作製した.このDNAを精製し,BDF1マウスの受精卵224個にマイクロインジェクションし,うち生き残った174個を偽妊娠マウスに卵管移植した.20日後に計26匹のマウスが産まれ,注入した遺伝子が染色体に組み込まれているかどうか,4週齢のマウスの尾より抽出したDNAを用いてPCRによるスクリーニングを行った.その結果,6系統のトランスジェニックマウスが得られ,うち4系統(#9,#13,#20,#24)が繁殖に成功した.この4系統の染色体当たりのトランスジーンのコピー数はサザンブロットでいずれも数コピーであった.主要臓器でのノーザンブロットおよびRT-PCRでは,大腸および小腸にトランスジーン由来のmRNAの特異的な発現を認めた.さらに4系統間の大腸でのmRNAの発現の比較を行い,このうち大腸での発現が高い2系統(#13,#20)を解析に用いるために,C57BL/6Jマウスと交配し繁殖させた.そして,約8週齢のトランスジェニックマウスおよびnegative littermateに対し,平均分子量約5万のデキストラン硫酸を1.5%で自由飲水させることにより腸炎の誘導を行なった.便の性状や体重変化などの臨床症状及びそのスコア化による評価を行なったが,トランスジェニックマウスで若干の炎症抑制傾向を認めたが,統計学的有意差は認めなかった.また組織の炎症の肉眼的・顕微鏡的な観察を行なったが,これもトランスジェニックマウスおよびnegative littermateに明らかな差を認めなかった.
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