研究概要 |
副腎アンドロジェンのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)に血糖降下作用のあることは,1982年Colemanらによって報告されているが,その後追加所見の報告がない.そこで我々は,まずDHEAの血糖降下作用の確認から本研究をスタートさせた.DHEAは糖尿病db/dbマウスの血糖を有意に低下させた.そこでDHEAによる血糖降下作用の機序解明の第一歩として,肝臓及び筋肉における糖代謝関連の酵素活性を検討したところ, db/dbマウスでは,糖新生系酵素であるglucose-6-phosphatase(G6Pase), fructose-1.6-bisphosphatase(FBPase)の活性が上昇しており,DHEA投与により抑制されることが判明した.この結果は,DHEAは亢進しているG6Pase,FBPaseを抑制することにより、糖新生を抑制している可能性を示唆している.この結果から, DHEAはインスリン抵抗性改善剤であることが解る.それでは,何故db/dbマウスでこれらの酵素活性が亢進し,DHEAにより抑制されるのか,今後の興味ある検討課題である.本研究では DHEAの血糖降下作用及びインスリン抵抗性改善作用がdb/dbマウスのみに認められる現象なのか,それとも広く一般に認められる現象なのか更に検討したところ,Zucker Fattyラット及び正常ラットでもインスリン抵抗性改善作用を認めた.今後,新しい血糖降下薬としてのDHEAの可能性を検討する予定である.
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