研究概要 |
ヒト慢性肝疾患における間葉系細胞の分化と増殖につき免疫組織学的に検索した。 1) 肝細胞癌被膜での平滑筋細胞の出現:肝硬変および肝細胞癌被膜の平滑筋マーカー(Actin:1A4,HHF35,CGA,Myosin heavy chain isoform:SMemb,SM1,SM2 )に関する免疫組織化学によって、後者に分布する紡錘形細胞が平滑筋としての形質を示すことを確認し、さらにデータを形態計測によって定量化しより明確にするとともに、量子顕微鏡において多量のアクチンフィラメントを含むなどの平滑筋としての特徴をもつことを観察した 2) 慢性肝疾患でのVEGFおよびレセプター(Flt-1,KDR/F1k-1)の発現:正常肝ではVEGFは少数のKupffer細胞(K-C)にのみ認められたがレセプターは認められなかった。鬱血肝では多数のK-C、細小動脈の内皮細胞にVEGFが認められたがレセプターは認められなかった。慢性肝炎、肝硬変では炎症部位でK-C、血管内皮細胞にVEGFが増強し、レセプターもマクロファージや新生血管内皮に発現していた。VEGFとレセプターの分布はほぼ一致した。 3) 大腸癌肝転移でのVEGFおよびレセプターの発現:非癌部ではVEGFは一部のK-Cのみに陽性でレセプターの発現は認めなかった。転移巣周辺の繊維化部分ではマクロファージの一部にCEGF陽性であったがレセプターは認めなかった。一方、転移巣周囲の肝組織ではマクロファージの集積および毛細血管の増殖があり、VEGFおよびレセプターの著明な発現を認めた。 今後さらに、転移性肝癌周囲においてVEGFおよびレセプターの発現している細胞を詳細に同定し、その生物学的意義についての検索を進める。
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