研究概要 |
本研究は大きく2部に分かれ,第I部では二酸化炭素問題を扱い,第II部では廃棄物問題を対象としている。 第I部では日本経済を対象とし,二酸化炭素問題排出量を明示した経済会計行列を推測した。この行列は32産業,政府,家計,資本,労働,資本勘定,外国部門から構成される。そして二酸化炭素発生量は,化石燃料等の使用量に比例させる形で推計している。用いたデータは主として産業連関表,国民経済計算である。 この会計行列を基準年データとして,動学的一般均衡モデルを作成した。このモデルでは,家計効用の現在価値総和を最大化するように,消費と貯蓄の選択がなされ,貯蓄は経済全体の資本ストックを増加させる。このモデルを用いて,1990年から2010年までの動学シミュレーションを行った。 シミュレーションケースは基準ケース,二酸化炭素税導入ケース,二酸化炭素排出権市場導入ケースの3ケースである。二酸化炭素抑制を目的とする2ケースでは,最終年次での抑制効果が同じになるようにケース設定を行っているが,産業部門間ではかなりの違いが見られ,比較静学モデルでは得られない結果を得ることができた。 第II部では第I部の研究に先行してなされたもので,北海道を対象とした廃棄物-経済システムの動学一般均衡分析である。動学一般均衡モデルの数値計算は,比較静学モデルに比べ,計算量が飛躍的に増加することに加え,経済成長経路を安定的に解くことが極めて難しい。第IIの研究は第I部のような産業部門数の多いモデル分析を,より効率的に行う目的で,3産業部門の比較的小規模なモデルを構築した。モデルの構造は第I部のそれとほぼ同じであるが,廃棄物処理を行う活動を内生化しているのが特長である。このモデルを用い,基準ケースを含め6ケースのシミュレーションを行った。特に,家計廃棄物有料化のシミュレーションでは,家計廃棄物を大きく減らすと同時に,消費-貯蓄選択の変化を通じた経済成長経路への影響,家計効用への影響などを調べることができた。
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