研究概要 |
1. 研究目的 界面や表面などの極微小領域に存在する分子に対して,界面の構造を明かにするために,レーザーを用いた高感度分析手法の開発を行なった. 2. 研究成果 レーザー非線形光学効果であるレーザー多光子イオン化法と,レーザー励起蛍光顕微法により,溶液や固体表面の定量分析を行ない,検出感度の向上を達成し有益な情報を得た. (1) 装置の試作:イオン化法では,高感度電流計を購入し,サブfAまでの感度でイオン化電流を計測した.顕微鏡下でパルスレーザー光を集光するための光学系を作製し,1ミクロン領域で発生するイオン化信号や蛍光信号を得ることができた. (2) イオン化法の電場依存性:電極構造の最適化により,100kV/cmまでの高電圧を初めて印加でき,84kV/cm以上では,イオン化信号がなだれ的に増加することを見出し,高感度定量を可能にした. (3) イオン化法の波長依存性:多光子イオン化信号の波長依存性を測定し,イオン化しきい値を決定した.2段階のしきい値が存在し,高いしきい値はバルク全体の溶媒分子との相互作用の影響を受け,低いしきい値は標的分子周囲の1層分の溶媒分子からのみ影響を受けることを見出し,分子の局所構造を明かにした. (4) 蛍光法での検出感度:有機分子含有溶液中にレーザー照射し,発生する蛍光を時間分解のリアルタイム測定を行ない,1個の分子の蛍光を検出した.蛍光信号の時間分布から拡散定数の算出を行ない,波長依存性のスペクトルから会合状態の解析を行なった.ガラス表面近傍とバルクでは,拡散挙動や会合状態が異なることを,実験的に示すことができた. 3. まとめ 検出感度として,蛍光法では単分子検出を,多光子イオン化法では約2fmolの検出を達成することができた.また,界面とバルクの挙動が拡散と会合状態で異なることを見出すことができ,局所領域の分子構造を明らかにすることができた.
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