研究概要 |
種々の癌における癌関連遺伝子産物の発現が示されてきている。ヒト癌の放射線治療において種々の癌遺伝子(産物)の発現が、治療効果とどのようにかかわっているか、また実際に治療中に利用可能なモニター法について検討する必要がある。そこで放射線に対する細胞の応答現象の一つとしていくつかの細胞膜抗原の発現に注目し、その中で特にMUC1に注目した。大腸癌細胞株HT29を用いて放射線照射後に発現するMUC1ムチンの解析をおこなった。X線は島津深部治療用X線発生装置を用いた(200kV,20mA,0.5mm Cu+1.0mmAlfilter、線量率1.5Gy/min)。X線照射後0〜7日培養後、HT29細胞培養上清中のMUC1はELISA法で、細胞表面上のMUC1の発現についてはFCM法で、細胞中のMUC1はWesternblot法により測定した。抗体は抗MUC1モノクローナル抗体(M.Y.1E12)を使用した。また細胞の生存率は色素排除法およびコロニー形成法を用いた。いずれの測定結果も、MUC1ムチン産物が1日目から4日目にかけて、0,1,3.6,10Gyと線量に応じて、増加していることが判明した。またMUC1の誘導は細胞のViabi11tyの低下の経時変化と対応していた。その結果、細胞膜表面にMUC1分子が発現してくることが判明した。そこで、そのMUC1チンの発現機構を調べることを目的とし、MUC1ムチンのmRNAをRT-PC8法を用いて測定した。RT-PCR法においては予備実験を行い反応温度、時間、サイクル数を調整することで、半定量法ではあるが、MUC1 mRNA量を測定することが可能になり、その結果、細胞の生存率の低下にともない。経時的にMUC1ムチンmRNAが誘導されることが明らかになった。
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