研究概要 |
本研究では,似顔絵の誇張方法とそこで用いられる様々の情報との関係をもとに乗用車における形態情報・概念情報の内容とそれを表現するための車体形状のデザインはどのように行うべきかの指標を得るため,以下の点を明らかにした。 (1)似顔絵における誇張方法と情報の内容との相関関係の抽出 似顔絵の誇張方法には,「(1)写実的」「(2)単純誇張」「(3)シンボル」「(4)脱構築」「(6)面影」「(7)アドヴァンス」の7つがあり、(1)から(7)になるほど抽象化がすすみ、顔の認識が困難になるが,印象は強くなることがわかった。その原因は,(5)(6)(7)となると顔の要素を重視せず,比喩やイメージ,それらをもとにさらに逸脱しているからである。 (2)乗用車の車体形状における誇張方法の案出 顔の要素を操作する誇張方法(1)(2)(3)(4)を対象に,従来の研究では,側面の輪郭線形状を点とそれを結ぶ線で表し,点の位置情報をもとに変形することで,誇張を実現していたが,点の位置情報だけでは,変形の際に形の骨格が崩れてしまうことがわかった。そこで,線の連続性を考慮するために,輪郭線形状をフーリエ変換を用いて周波数婦スペクトルへと分解し,その一部を削除する方法を用いて各周波数にどれだけ形情報が含まれているか推定し、特徴把握との関係について検討を行った。乗用車の側面視についても高揚の操作で輪郭線形状を変形し、もとの形状に対してどのような違いが表れるかを同定の容易さをもとに比較した。この結果から,1〜48Hzまでの周波数スペクトルに車体形状全体のプロポーションを表す形情報が含まれているが,これだけでは必ずしも同定に寄与しないことがわかった。また,49Hz以下にはコーナー部やその周辺の丸み,ボディ全体を形成する曲線の質(丸みの大きさやその変化)といった全体のデザインを支配する形状への味付けを整える形情報が含まれており,それらがあることで同定が促進することが分かった。
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