研究課題/領域番号 |
09F09079
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 外国 |
研究分野 |
水工学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沖 大幹 東京大学, 生産技術研究所, 教授
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研究分担者 |
OZCELIK Ceyhun 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2010年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2009年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | ダウンスケーリング / 地球温暖化 / 地理情報システム / 水循環解析モデル / 陸面水循環 / リモートセンシング / 持続可能性 / 気候変動 / 土地利用変化 / 水文モデル / 衛星データ / 水循環解析 |
研究概要 |
平成23年度は、研究計画に対応して、まず地域分割手法に関する既往研究の調査を行った。既往研究は多数存在するが、そのほとんどは渇水や洪水といった極端現象を対象としている。周期性に関する変数は、時間的・空間的な共変動による影響を受け、古典的な等質性分析を直接利用することはできない。このため、月単位流量の時間変動に関するパラメータ推定において利用できる水文学的等質性を定義するため、新たな手法を開発した。この研究段階で、定義された等質な地域において、月河川流量の基本的なパラメータの動きを予測に利用する5種類の地域区分手法を提案した。これらは大きく分けて関数形非依存型と関数形依存型の2種類のカテゴリーに分類される。これらの手法は月単位の周期的なパラメータに処理を施さない値、もしくはフィッティングされた値を正規化して利用する。これらのパラメータは階層クラスター分析によって等質的な領域を決定するために利用される。人間活動による影響(たとえばダムや貯水池、取水)がないデータの取得しやすさを考慮して、本研究で提案したモデルはトルコ南部における2つの主要な流域において試験を行った。その結果、提案した地域区分手法は月流量の周期的な変動の予測に非常に有効であった。関数形依存型のアプローチは実用可能性が高く、関数形非依存型のアプローチはより多くのパラメータを必要とするが、どちらのアプローチも月単位の記録がない、もしくは短すぎる河川区間について信頼できる流量推定値を得ることができる。 地域区分手法に利用するスケールパラメータを推定するためのツールを開発している間に、利用した画像分類手法によって結果が大きく異なることを発見した。そこで、この点に焦点をおいて研究を進めた。既往研究の調査により、より精度が高い分類手法を開発するための研究は多く行われているが、分類項目内の不均質性が原因で、頑健で信頼できる分類手法は開発できていないことが分かった。実利用においては、pixel-level classifierが素早く現実的な精度の推定値を与えるため、よく利用されている。しかし、正規分布に従わない不均質な土地における結果はあまり良好でない。異なる手法を利用すれば正確な土地利用分類が可能であることを考慮して、分類項目内の不均質性に起因する精度の低下を抑え、より高い精度を得ることができる土地利用分類を開発した。 また、極端水文現象の長期変動を評価するため、月最大降水量について地域トレンド分析を応用することとした。 この分析は地域スケールにおける降水極値の時空間分布の研究および日本における極値降水の気候変動影響の研究に貢献した。手法としては、月最大降水量について均質的な地域を抽出するため、指標洪水法を用い、月降水量の確率分布に応じて観測値を分類した。分類に際し、観測値のLモーメントを用いた。各地域はクラスター分析によってさらに分割され、同じ程度の分布パラメータを持つ地域を抽出した。はじめ、極値の性質を表わすために12の指標を用いたが、最終的には1つの統合した指標を用いて地域トレンドを定義することを提案した。 この事業によって提供される研究機会により、受け入れ機関と研究者の間で知識と経験が共有され、相乗効果を生みだし科学研究における生産性を高めることができた。このことは受け入れ機関、研究者との間の長期的な協力関係を結ぶことに貢献していると考えられ、研究者の可能性を拡げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画されていた、地域区分手法に利用するスケールパラメータを推定するためのツールを開発している間に、利用した画像分類手法によって結果が大きく異なることを発見するなど、しばしば、従来の発想にとらわれない柔軟な発想で問題提起をしていた。更に、従来の手法と比較して、より高い精度を得ることができる新しい土地利用分類手法を開発するなど、当該分野において革新的な技術を、2年間という短期間の間で開発に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
研究の次の段階として、まず地域トレンド分析による結果について論文を執筆する。また、研究計画や目的に基づき、分布型流出モデルの開発およびその結果の投稿の準備を進め、さらに、リモートセンシングによる月流量のスケールパラメータ推定の可能性を調査する予定である。
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