研究概要 |
平成22年度は、初年度の検討で解析された降雨の時空間分布、洪水や渇水の外力となる極値水文量の変化といった水利用・水災害に直結する衛星データの解析を継続するとともとに、初年度に設計された全球水循環・水環境・生態系フィールドの各サブモデルを実際に稼動させ、流城特性の変化予測や水利用・水災害対応システムの安全度評価を行った。具体的には、 1)衛星観測データ及び全球水循環・水環境・生態系解析モデルのアウトプットを初期値とする異なる流域スケールでの降水量分布の詳細な変化予測、 2)衛星観測データに地理情報システム及び統計解析手法を介した洪水や渇水などの水文極値への影響把握、 3)気候変動下における水質・生態の変化及び森林等の保水力及び流出形態への影響評価、 4)地域レベルの河川及び排水処理システムなど水の人工循環系と水災害防止システムの持つ安全度への影響評価、 5)社会・経済活動への影響評価を中心に検討を行った。また、同時に、 6)全球規模での水循環変動予測をもとにした地域スケールへのダウンスケーリング手法やその精度評価 7)日本全体スケールでの水災害環境の変化に関する成果が出た。 オズチェリク氏の母国であるトルコでは河川水量全体の約半分を用いた大規模な国土開発が計画されており、国際的な水資源事業における諸問題とその解決の方策を示すことが極めて重要である。本研究では、従来の地球環境変動、地球温暖化及び水循環の変化が社会へ及ぼす影響の評価に関する研究分野をさらに発展させるべく、東京大学生産技術研究所の地球水循環システム研究グループに滞在し、今後急激な人口増加が予測されるアジア地域を対象として,異なるスケールの流域における水循環とその管理、及び日本を含むアジア諸国における水問題について研究し、これまで当該グループが開発してきた水循環解析モデルの統合化及び精度向上を行い、社会・経済活動への影響評価までを行うことにより、持続可能な水政策の立案に資する成果が出た。
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