研究課題
特別研究員奨励費
現在、カメルーンの熱帯雨林に暮らしている狩猟採集民バカは、森林伐採やこれに対抗する形で行われている森林保護の板ばさみになって、生活や文化を維持するのが難しくなってきている。そこで、わたしはバカの生活・文化を考慮した森林保護プロジェクトの確立をめざし、これに大きな影響を与えるような新たな動き、先住民運動とバカの慣習的権利の確立に注目してきた。具体的には、1)先住民を取り巻く国際情勢やカメルーン政府による先住民政策の変化を分析することにより、森林をめぐる地域のミクロな現象がいかに国際的な状況と密接に関連するものであるかについて明らかにすること、2)地域におけるバカの慣習的利用域の実態を具体的かつ包括的に明らかにする手段として、GPSなどの機器を用いて、バカが自ら活動域を地図上に投影する参与描地図法(participatory mapping)の導入を検討すること、である。これらの研究をもとに最終的には、3)森林保護プロジェクトの推進者、先住民の支援団体、バカの代表者とともにワークショップを行い、先住民の慣習的権利の確立をすすめようとしている。平成23年度前期(4~9月)は、ロンドン大学人類学科で中央アフリカにおいてピグミーを対象に参与描地図法の利用を開始したJerome Lewis博士と会合をもち、参与描地図法の実施にあたっての問題点と先住民運動の動向について議論を行ってきた。そして、彼のサポートを得ながら、先住民運動の分析を行った。後半(10月~平成24年3月)は所属先の京都大学理学研究科生物科学専攻動物学教室人類進化論研究室のセミナーに参加し、ゴリラやチンパンジー、ニホンザルの研究者と交流することによって、動物学的な観点から自然の持つ価値や保護という問題を考えた。名古屋で愛知県立大学がNPOや地球環境学研究所とともに開催した地球環境学講座「森と草原」のイベントの実行委員となり、先住民、研究者や教育関係者、学生、一般市民などとの交流をはかった。バカの活動家を招き、参与描地図法や先住民運動について検討した。執筆活動については、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の出版助成をもらい、これまでの研究をまとめる形で本の出版を行った。
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In Whallon R., W.Lovis and R.Hitchcock (eds.) Information and its Role in Hunter-Gatherer Bands, Cotsen Institute of Archaeology Publications
巻: 印刷中
森棲みの社会誌 アフリカ熱帯林の人・自然・歴史II
ページ: 179-205
熱帯アジアの人々と森林管理制度-現場からのガバナンス論
ページ: 222-242
http://www.tenri-u.ac.jp/teachers/q3tncs0000035sxr.html
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/cgi-bin/CameroonFS/wiki.cgi?page=%C9%FE%C9%F4%BB%D6%C8%C1