研究課題
特別研究員奨励費
ヨコヅナクマムシの成体は茶色を呈するが、ヨコヅナクマムシ共生細菌を同定する過程で偶然、茶色の色素を欠失した白色の個体を単離しており、アルビノ変異体の解析は、極限環境耐性機構の解明という点で、本研究の成果を飛躍的に発展させることが期待される。in vivoの機能解析では遺伝学は強力なツールであるが、クマムシでは遺伝マーカーの不足に加え、単為生殖を行う種も多く、遺伝学の適用は困難であった。近年のシーケンス能力の向上により、野生型のゲノムと比較し変異体の変異遺伝子の同定が可能となっている。我々は極限環境耐性動物ヨコヅナクマムシのゲノムを解析中であり、耐性能が変化した変異体を作出し次世代シーケンサーにより変異遺伝子を同定することで極限環境耐性機構を解明できると考えられる。そこで、アルビノ変異系統について次世代シーケンサーを用いRNA-seqを行いレファレンスゲノムと比較し変異遺伝子および発現変動遺伝子の同定を試みた。アルビノおよび野生型からRNAを抽出しcDNA化しイルミナ次世代シーケンサーを用いてそれぞれ約4Gbの配列解読を行った。得られた配列をドラフトゲノムにTopHatを用いマップした結果を基に、SNPの検出を行った結果、アルビノにおいて5つの遺伝子に変異が入っていることが明らかとなった。また、アルビノと野生型のRNA-seqで得られた配列をそれぞれドラフトゲノムにTopHatを用いマップしcuffdiffにより遺伝子の発現変動解析を行った。その結果、25の遺伝子が統計的に有意に発現変動していた。アルビノにおいて酸化ストレスタンパク質、ATPase、NADH dehydrogenaseなどが発現上昇していた。またアルビノにおいて発現量が減少していた遺伝子は、ほとんどが機能未知であった。これらアルビノにおいて変異、発現量に変動がみられる遺伝子が、アルビノ変異体の原因のひとつだと考えられる。
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Astrobiology
巻: Apr 10(On line) 号: 4 ページ: 283-289
10.1089/ast.2011.0669