研究概要 |
ヨコヅナクマムシ共生細菌を同定するためヨコヅナクマムシの卵を表面殺菌し卵を破砕後、抽出したDNAから16S rRNAを増幅し配列決定した。その結果、卵表面を溶解し抽出したDNAからは検出されない1種類の細菌の配列が得られた。この細菌は卵の中に存在すると考えられ、ヨコヅナクマムシ共生細菌である可能性が高い。また卵に存在するということは、ミトコンドリアの様に親から子へと卵を介して垂直伝達されていると考えられ、ヨコヅナクマムシ共生細菌は宿主にとって必須な存在であり密接な共生関係を築いているのではないかと考えられる。得られたヨコヅナクマムシ共生細菌の16S rDNAからプローブを作製し、FISH (fluorescence in situ hybridization)法を用いて共生細菌のヨコヅナクマムシ体内および卵における局在・存在様式を解析中である。 ヨコヅナクマムシの成体は茶色を呈するが、ヨコヅナクマムシ共生細菌を同定する過程で偶然、茶色の色素を欠失した白色の個体を単離した。アルビノ変異体の解析は、極限環境耐性機構の解明という点で、本研究の成果を飛躍的にに大きく発展させる可能性があると期待される。乾燥耐性を調べるため、アルビノと野生型15匹ずつ相対湿度33.8%で2日間乾眠誘導し、給水後の復帰率を測定した。その結果アルビノは野生型と同様にほぼ全ての個体が乾眠から復帰した。よって乾燥耐性は両者で同程度であると考えられる。次に放射線、紫外線耐性を調べるため、活動状態のアルビノと野生型15匹ずつに2,4,6kGyのガンマ線、30,100,200mJ/cm^2の紫外線を照射した後の生存率を測定した。その結果、野生型がすべての条件でほぼ100%生存したのに対し、アルビノ変異体は6kGyのガンマ線照射で約60%、紫外線100,200mJ/cm^2の照射で約60%、40%と生存率が顕著に低下した。よってアルビノ変異体の放射線、紫外線耐性は野生型よりも弱いことが明らかとなった。
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