研究概要 |
本研究では、ナタマメ属植物3種間の交雑集団の解析および交雑集団とアリとの共生関係について明らかにすることを目的として研究を行った。 マイクロサテライト遺伝子マーカーの開発と雑種集団の検出 10のマイクロサテライト遺伝子座を開発し、7つのプライマーを用いて本州から琉球列島にかけて33集団417個体について解析を行った。3種間の交雑集団の解析はソフトウェアNEWHYBRIDSを使用した。解析の結果、本州~九州の集団では低い頻度でハマナタマメとナガミハマナタマメの交雑個体が分散し、琉球列島ではハマナタマメとナガミハマナタマメが広範囲で交雑を起こしていることが考えられた。また、沖縄島、石垣島のタカナタマメはハマナタマメと交雑を起こしていることが明らかになった。 交雑種とのアリとの相互関係 四国(L×R1)、沖縄本島(L×R2,C×L1,C×L×R1)、石垣島(C×L2,C×L3,C×L4)の7つの調査地を設定し(C:タカナタマメ、L:ハマナタマメ、R:ナガミハマナタマメを示し、×はそれぞれの種間の交雑を示す)、花の数やアリの数の記録を行った。また、アリの排除実験を行い、花や果実への防御効果を明らかにした。調査の結果、雑種個体では花の数が多い傾向が見られた。しかし、花外蜜に集まるアリの数や防御効果は、アリの種類や果実へのアリの営巣の有無によって違いが見られた。そのため、雑種形成はアリとの共生関係に影響を与えず、防衛効果は設立した環境下に生息するアリの種類や営巣状況によって影響されると考えられた。しかし、果実生産が多かったという結果から、タカナタマメとハマナタマメの交雑によってタカナタマメに本来なかった花数や花序数が増加が起こりポリネータを多く引き寄せることができ、繁殖成功度を高めた可能性が考えられた。
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