研究概要 |
ゾウリムシ(Paramecium caudatum)の失われたシンゲシ(遺伝学的種)標準株を再構築し、複雑な進化経路を辿っていることが示唆されている種進化の全容を明らかにするためには、地理的に離れた場所からの多様なシンゲンに属する株が必要である。2年間にわたりアメリカ五大湖周辺及び東海岸・南米のウルグアイ国に出かけ精力的に採集した。 ・採集地点は合計北米大陸197地点、ウルグアイ国78地点である。その他、ドイツ、中国、フィリッピンからも協力を得た。そのうち、34地点からヅウリムシが得られ、222株を単離培養株として確立した。 ・P.caudatum以外にも貴重な原生動物が得られ、Protist Databaseに原生生物148属378種の画像を組み込んだ。 ・今回採集した株・これまで国内外で採集した接合型未知の株の中にシンゲン1,3,5,12に属する株を得た他、新たに3シンゲン(当面a,b,dとする)を確立した。 ・最重要な成果は、外形はP.caudatumであるのにRAPDパターシや核のタイプ及び数、収縮胞の数が既知のどの種にも属さない系統が7株あった。これらは新種である可能性が高い。また、相補的な接合型グループを形成する(当面c,eとする)。 ・2〜3シンゲンにまたがって交配反応する株を解析し,既知シンゲンの標準株にもシンゲン間交配反応する株があることが分かった。シンゲン標準株の確立の重要性を示している。 ・全野外採集株のイオン刺激に対する反応性を調べたところ、反応性が明らかに異なる株Kum1,UC102を得た。Kum1は繊毛軸糸の突然変異体である可能性が高い。
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