研究概要 |
血管には拡張神経の存在も知られており,摘出血管壁に経壁的に電気刺激を与えると弛緩反応が生じる。しかしながら、この神経を介した弛緩反応に対するエタノールの影響はいまだ検討されたいない。拡張神経には一酸化窒素(NO)作動性神経とcapsaicinに感受性のある知覚神経がしられており,それぞれNOとcalcitonin gene related peptide(CGRP)の遊離を介して弛緩する。ラットの上腸間膜動脈を用いて平成10年度は経壁的電気刺激と同様の作用をもつニコチンの作用に対するエタノールの効果を,また11年度は実際に摘出したラットの上腸間膜動脈に経壁的に電気刺激(amplitude,10V : pulse duration,1 msec : 1-2Hz,30s)を与え,拡張反応に対するエタノールの作用を検討した。その結果ラットの上腸間膜動脈において,血管を支配する神経の末端から遊離される拡張物質としてVIP,ATP,やsubstance Pは否定的でCGRPが主に関与していることがわかり,NOの関与は少なくないと考えられた。エタノールはニコチンと電気刺激による弛緩反応を抑制したが,外因的に投与したCGRPの弛緩反応を制御しなかったので,その抑制作用は平滑筋ではなくpresynapticなレベルにあると考えられる。今後は組織免疫学的手法を用いてNO作動性神経の存在の有無について検討する必要がある。
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