研究課題/領域番号 |
10610012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
哲学
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
三浦 要 十文字学園女子大学, 社会情報学部, 助教授 (20222317)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1999年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1998年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | ソクラテス以前 / ヘラクレイトス / 対立者の一致 / 対立者の同一性 |
研究概要 |
ヘラクレイトスにおける「対立者の一致」の概念は、文字通りに解釈されると、矛盾律違反と見なされうるものである。そのため、研究者の中には、対立者の「一致」が、「同一性」というよりもむしろ「連続性」であると理解しようとするものが多い。しかしながら、この解釈は、ヘラクレイトスの思想に対して時代錯誤的に論理の一貫性を与えようとするものであって、必要以上に彼の思想を合理化し、その結果この点での彼の独自性を不適切な仕方で弱めるものである。ヘラクレイトスの著作断片のうち、「対立者の一致」に言及した断片を多く引用しているローマのヒッポリュトスは、「一致」を、異なる諸要素の単なる連続性でなく絶対的客観的な同一性であると理解している。彼の解釈はおそらく誤ってはいないだろう。確かに、ヘラクレイトスの挙げる「一致」の例には、日常生活からとられ、それゆえ、相対性の観点から無理なく合理的に解釈できるものである。しかし同時に彼は、「一致」というものが目に見えず、容易にその存在を認めることが困難な、そうした例も挙げているのである。この場合の「一致」は遙かに一般化され、対立者によって構成されている宇宙万有の隠れた構造とその客観的なパターンを表している。したがって、我々は、ヘラクレイトスにおける対立者の一致について、二つのレベルを考える必要がある。すなわち表面的な現象としてのそれと、客観的で本質的なそれである。いうまでもなく、ヘラクレイトスにとって宇宙の本性を理解する上で重要なのは後者である。これは、対立者が、相互に対立しあいながらも同時に宇宙の調和と均衡を実現する、動的な一致である。対立者の一致の主張は、我々にとって非常に不合理なものに見えるが、しかし、ヘラクレイトスの目には、このようなパラドクシカルなあり方こそが、確かに万有の真実のあり方を示すものと映ったのである。
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