研究概要 |
この研究ではDirichlet級数をBohr群K上の解析関数として捉え,関数環論とエルゴード理論を用いて,それらの性質と応用を調べてきた.とりわけ解析数論への関連から,Riemannのζ関数の平均値定理やcritical stripにおける値分布を中心に扱った.まずK_tを{log r ; rは正の有理数}で生成される離散群Γのコンパクトな双対群とする。このときΚ上に自然な位相同型の1係数群{Tt}_<t∈R>が定義される.いま1/2<uを固定し, Z_u(x)=Σ^^∞__<n=1> 1/n^u_<Xlogn>(x), x∈K, とする.ここで_<χlogn>はlognで定まる指標を表す.このときt→Z_u(T_t0)はζ(u+it)となりζ関数のH^2(K)内の関数への拡張となる.またZ_u(x)はH^2(K)の外部関数となる.流れ(K,{T_t}_<t∈R>)のもつエルゴード性とRoucheの定理より,Riemannのζ関数のつぎのような(弱いが)一般的な平均値定理が成り立つ: 定理 任意の0<k<∞およびl>0を定める.このときZ^+の適当な密度零の部分集合Jが存在し,以下の式がなりたつ: lim__<j∋N→∞>1/(Nl)Σ^^<N-1>__<n=0>∫^<(n+1)l>_<nl>|ζ(u+it)|^<2k>dt=∫_K|Z_u(x)|^<2k>dσ(x). この結果はLindelof仮説が弱い意味で成立することを示すと同時にζ関数のごく狭い範囲にその難点の全てが起因していることを示している.また並行してt→Z_u(T_tx)から定まるEuler積をもつDirichlet級数のクラスを詳細に調べてみた.これによりRiemannのζ関数だけが持っ特殊性がある程度明確になってきたように思う.
|