研究概要 |
高分子表面にプラズマ処理を行うと高分子-水間の接触および衝突帯電を制御できることがわかっている。これは高分子表面に導入された酸素官能基が界面電気二重層の形成を阻害することに起因している。本研究は高分子パイプ内壁をプラズマ処理することによる流動帯電の制御をめざしたものである。使用したプラズマはDC、20kHzおよび13.56MHzであり、ガスはO_2,N_2およびCF_4である。液体は純水とシリコーン油であり、高分子材料は低密度ポリエチレン(LDPE)とテフロン(PTFE)である。得られた結果を以下に示す。 1 O_2,N_2プラズマ処理を行った場合、純水の流動電流は未処理の場合に比べてほぼ同じか20%程度大きくなる。著しい改質の効果はみられない。これは観測された流動電流はパイプ内壁に発生した電荷による静電誘導に起因する、ことが明らかになった。つまり、高分子-水間の流動帯電現象は従来の電気二重層理論では説明することができない。 2 高分子パイプ中におけるシリコーン油の流動電流は高純水に比べ2〜3桁小さく、LDPEと金属パイプで負極性、PTFEパイプで正極性である。 3 シリコーン油において、LDPE中の流動電流はプラズマ処理により極性が反転する。特に、O_2,N_2プラズマ処理を行うと約1桁の抑制効果がみられる。 4 電気二重層を構成するイオン種を明確にするために陰イオン性界面活性剤であるAOTを混入した試料においては、1ppmの含有でLDPE中の流動電流は極性反転する。 5 シリコーン油の流動電流はAOT濃度に比例し、未改質LDPEパイプに比べてCF_4プラズマ処理した場合には2桁増加し、O_2,N_2プラズマ処理した場合には1桁増加する。 6 プラズマの周波数の影響は明確には認められない。 7 これらの結果はプラズマ処理により電気二重層の構造が変化したことを示唆している。二重層を構成するイオン種に応じて処理方法を変えなければいけないことが明らかになった。 得られた結果は論文投稿準備中である。
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