研究概要 |
平成10年度には高周波プラズマを使って高分子パイプの表面処理を行い、高分子と水間の帯電抑制効果を測定した。その結果、高分子と水間の電荷交換は抑制することはできるが、パイプ内壁電荷の静電誘導のために流動帯電は抑制することは困難であった。つまり、高分子-水間の流動帯電現象は従来の電気二重層理論では説明できなかった。平成11年度は絶縁性液体の帯電抑制を目的として、パイプ内壁をいろいろな周波数のプラズマ中で改質し、その効果を明らかにした。絶縁性液体はシリコーン油で、高分子材料は低密度ポリエチレン(LDPE)とテフロン(PTFE)である。得られた結果を以下に示す。 1 高分子パイプ中におけるシリコーン油の流動電流は高純水に比べ2〜3桁小さく、LDPEと金属パイプで負極性、PTFEパイプで正極性である。 2 シリコーン油において、LDPE中の流動電流はプラズマ処理により極性が反転する。特に,O2、N2プラズマ処理を行うと約1桁の抑制効果がみられる。 3 電気二重層を構成するイオン種を明確にするために陰イオン性界面活性剤であるAOTを混入した試料においては、1ppmの含有でLDPE中の流動電流は極性反転する。 4 シリコーン油の流動電流はAOT濃度に比例し、未改質LDPEパイプに比べてCF4プラズマ処理した場合には2桁増加し、O2、N2プラズマ処理した場合には1桁増加する。 5 プラズマの周波数の影響は明確には認められない。 6 これらの結果はプラズマ処理により電気二重層の構造が変化したことを示唆している。 二重層を構成するイオン種に応じて処理方法を変えなければいけないことが明らかになった。
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